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FAQ自動化の進め方|AIチャットボット導入のポイントと手順を解説

2026/01/17

FAQ自動化の進め方|AIチャットボット導入のポイントと手順を解説
目次

FAQ自動化は、問い合わせ対応の効率化を目的として、多くの企業で検討されています。

一方で、FAQ自動化を進めたものの、思ったほど問い合わせが減らなかったり、現場で使われなくなったりするケースも少なくありません。

こうした失敗の多くは、ツール選定以前に、導入の進め方や設計の考え方が整理されていないことに起因しています。


FAQ自動化は単なる仕組み導入ではなく、業務フローやナレッジの整理を含めた運用設計の取り組みです。

本記事では、FAQ自動化をこれから進める企業向けに、実務視点での導入フローと、押さえるべきポイントを段階的に整理します。

1. FAQ自動化とは何か

1-1. FAQ自動化の目的を明確にする

FAQ自動化を検討する際、最初に整理すべきなのは「何を解決したいのか」という目的です。

多くの場合、「問い合わせ件数を減らしたい」という理由から導入が検討されますが、FAQ自動化の目的はそれだけではありません。


回答品質を均一化したい、属人化した対応を減らしたい、担当者ごとの対応負荷を平準化したいといった課題も、FAQ自動化によって改善できる可能性があります。

どの課題を優先的に解決したいのかによって、FAQ自動化の進め方や設計の考え方は大きく変わります。

1-2. FAQ自動化が向いている業務・向いていない業務

FAQ自動化は、すべての問い合わせに適しているわけではありません。

手続き方法やルール説明など、判断基準が明確で、回答内容を定型化できる質問は自動化に向いています。

一方で、個別事情の確認が必要な相談や、例外対応が多い問い合わせについては、人による対応を残した方が適切です。

自動化する範囲と人が対応する範囲を見極めることが、FAQ自動化を定着させるための重要な前提になります。

2. FAQ自動化の全体フローを理解する

2-1. FAQ自動化は段階的に進めるべき理由

FAQ自動化は、一度の取り組みで完成させるものではありません。

最初からすべての問い合わせを自動化しようとすると、設計が複雑になり、運用が回らなくなるケースが多く見られます。


対象を限定し、小さく始めたうえで、運用しながら改善を重ねていく前提で進めることが重要です。

段階的に進めることで、現場の理解を得やすくなり、運用体制も無理なく整えられます。

2-2. FAQ自動化の基本ステップ

FAQ自動化は、全体の流れを意識して進めることが重要です。

まず、現状の問い合わせ内容を把握し、自動化の対象となる質問を整理します。

次に、FAQコンテンツを設計し、運用に適した形でナレッジ化します。

その上でツールを導入し、運用を開始しながら精度改善を行います。

この一連の流れを意識することで、FAQ自動化を業務に定着させやすくなります。

3. ステップ① 現状の問い合わせ内容を整理する

3-1. 問い合わせログを洗い出す

FAQ自動化を進めるうえで、最初に行うべき作業は、実際に発生している問い合わせ内容を正確に把握することです。

この段階でありがちな失敗は、「よく聞かれる質問はこれだろう」という担当者の記憶や感覚に頼ってしまうことです。


実際には、メール、問い合わせフォーム、チャット、電話対応メモなど、複数のチャネルに問い合わせが分散しており、担当者が想像していなかった質問が頻繁に発生しているケースも少なくありません。

例えば、「料金について」という問い合わせ一つでも、「初期費用はかかるのか」「月途中で解約した場合の請求はどうなるのか」「プラン変更はいつ反映されるのか」といった具体的な疑問に分かれていることが多くあります。

こうした実際のログを可能な限り集め、質問文をそのまま一覧化することで、自動化すべき対象が具体的に見えてきます。


■問い合わせログを洗い出した結果の例

実際に問い合わせログを整理すると、次のような質問が多く見つかるケースがあります。

例として、BtoBのSaaSサービスにおける問い合わせを想定します。

・料金はいくらですか  

・初期費用はかかりますか  

・契約期間は何年ですか  

・解約方法を教えてください  

・解約するといつまで使えますか  

・プラン変更はいつ反映されますか  

・請求書払いはできますか  

一見すると「料金」「契約」「解約」といった大きな括りに見えますが、実際にはそれぞれ別の質問として扱う必要があります。

このように、ログをそのまま並べることで、自動化すべき質問の粒度が具体的に見えてきます。

3-2. 自動化対象と人対応対象を切り分ける

集めた問い合わせをそのまま全て自動化しようとすると、FAQ自動化は失敗しやすくなります。

判断基準が明確で、誰が答えても同じ内容になる質問は、自動化に向いています。


一方で、「状況を確認したうえで判断が必要な質問」や、「例外対応が頻繁に発生する問い合わせ」は、人による対応を残した方が適切です。

例えば、「解約方法を教えてほしい」という質問は自動化しやすい一方で、「契約内容を踏まえて、どのプランが適切か相談したい」といった質問は、人が対応する方が満足度が高くなります。

自動化と人対応の境界を明確にすることで、誤回答を防ぎ、FAQ自動化全体の信頼性を高めることができます。


自動化対象と人対応対象の切り分け例

上記の問い合わせを、自動化向き・人対応向きに分けると次のようになります。

【自動化に向いている質問】

・料金はいくらですか  

・初期費用はかかりますか  

・契約期間は何年ですか  

・解約方法を教えてください  

【人対応を残すべき質問】

・自社の利用状況に合うプランを相談したい  

・特殊な契約条件について確認したい  

判断基準が明確で、回答内容が固定できる質問は自動化に向いています。

一方で、前提条件をヒアリングする必要がある質問は、人が対応した方が満足度が高くなります。

3-3. 問い合わせの優先順位を決める

FAQ自動化は、問い合わせ件数が多いものから順に進めればよいとは限りません。

件数は少なくても、対応に時間がかかっている問い合わせや、担当者の負荷が大きい質問を優先する方が効果的な場合もあります。


例えば、一件あたりの対応時間が長く、毎回説明が必要な質問は、自動化することで業務負荷を大きく減らせます。

問い合わせ件数と対応工数の両面から優先順位を整理することで、FAQ自動化の効果を早い段階で実感しやすくなります。


■優先順位の付け方の例

問い合わせ件数が多い順に並べると、次のようになりました。

1位 料金はいくらですか  

2位 解約方法を教えてください  

3位 契約期間は何年ですか  

一方で、対応工数を基準に見ると、「解約方法」「解約後の利用可否」は毎回説明が必要で、対応時間が長いこともあります。

このケースでは、件数と工数の両方を見て「解約関連」を最優先で自動化する判断が現実的です。

4. ステップ② FAQコンテンツを整理・設計する

4-1. 既存FAQをそのまま使えない理由

Webサイトに掲載されているFAQは、必ずしもFAQ自動化に適した形とは限りません。

人が読むことを前提に作られたFAQは、背景説明が長かったり、複数の質問への回答が一つにまとめられていたりすることが多くあります。


FAQ自動化では、一つの質問に対して一つの明確な回答が返る構造が求められます。

そのため、既存FAQはそのまま流用するのではなく、自動化に適した形へ整理し直す必要があります。


■既存FAQをそのまま使った場合の問題

既存FAQでは、次のような書き方がよく見られます。

Q. 契約と解約について教えてください  

A. 当サービスの契約期間は1年間です。

途中解約の場合は違約金が発生します。

解約を希望される場合は、解約希望日の30日前までにマイページから手続きを行ってください。

このFAQには、契約期間・違約金・解約方法という複数の話題が混在しています。

FAQ自動化では、このままでは検索精度が下がりやすくなります。

4-2. FAQ自動化向けの質問と回答を作成する

FAQ自動化では、「利用者が実際にどのような言葉で質問するか」を意識して質問文を設計することが重要です。

正式な用語だけでなく、口語的な表現や言い換えも考慮することで、検索やマッチングの精度が向上します。


回答文は、まず結論を簡潔に示し、その後に補足や注意点を加える構成が適しています。

長い説明を一度に返すよりも、必要な情報を過不足なく伝えることで、利用者の満足度も高まります。

■FAQ自動化向けに整理した質問と回答

上記のFAQを、自動化向けに整理すると次のようになります。

Q. 契約期間は何年ですか  

A. 契約期間は1年間です。

Q. 解約方法を教えてください  

A. 解約はマイページの「契約管理」画面から行ってください。

解約希望日の30日前までに手続きが必要です。

Q. 途中解約すると違約金は発生しますか  

A. 契約期間中に解約した場合、違約金が発生します。

一問一答に分けることで、質問意図と回答が明確に対応するようになります。

4-3. ナレッジ設計とチャンクの考え方

FAQコンテンツは、運用や精度改善を前提として設計することが重要です。

一つのFAQに複数の話題を詰め込むと、検索時に不要な情報まで一緒に参照され、回答が冗長になりやすくなります。


意味単位でFAQを分割し、チャンクとして管理することで、検索精度や回答精度を安定させやすくなります。

この段階でチャンク設計を意識しておくことで、FAQ自動化を拡張しやすいナレッジ基盤を作ることができます。


■チャンク設計を意識したFAQ管理例

FAQ自動化では、これらの質問と回答をそれぞれ独立したチャンクとして管理します。

【チャンク1】

契約期間は1年間です。

【チャンク2】

解約はマイページの「契約管理」画面から行ってください。

解約希望日の30日前までに手続きが必要です。

【チャンク3】

契約期間中に解約した場合、違約金が発生します。


このように分けて管理することで、検索時に必要な情報だけが参照され、回答が簡潔で安定しやすくなります。

また、チャンク設計が適切であれば、FAQの追加や修正が発生した場合でも、影響範囲を限定した更新が可能になります。

5. ステップ③ ツール導入時に押さえるポイント

5-1. シナリオ型(ルールベース)とAI型の違いを整理する

FAQ自動化のツールには、大きく分けてシナリオ型(ルールベース)とAI型があります。

シナリオ型は、あらかじめ定義した質問と回答、もしくは分岐ルールを設定し、その通りに案内する方式です。

想定された質問に対しては安定した回答が返る一方で、質問の言い回しが少し変わるだけで対応できなくなるケースが多く、運用を続けるほど分岐の管理が複雑になります。

そのため、FAQの数や表現が増えるにつれて、メンテナンスコストが高くなりやすいという課題があります。


一方、AI型は質問の意味を理解して回答を返すため、表現の揺れや言い換えに強く、FAQの追加や修正にも柔軟に対応できます。

現在のFAQ自動化においては、シナリオ型を選ぶ明確なメリットは少なく、AI型を前提に検討するケースが一般的になっています。

FAQ自動化の目的や将来的な拡張を考えると、AI型を前提に設計することが現実的な選択といえます。

5-2. FAQ自動化ではRAGを前提に設計する

FAQ自動化の多くは、FAQだけでなく、規約やマニュアル、社内資料など、複数の情報源を横断して正確に案内することが求められます。

そのため、RAGを前提とした上で、どのようにナレッジを整備し参照させるかが重要になります。


特にFAQ自動化では、回答の根拠となる情報が明確であることや、参照先が最新の状態に保たれていることが、精度と信頼性を左右します。

設計において、FAQ・規約・マニュアルをどの単位で管理するか、どの情報を優先的に参照させるかといった点を整理しておく必要があります。

FAQ自動化の対象範囲が広がるほど、RAGの使い方やナレッジ設計の質が、精度と運用の安定性に直結します。

6. ステップ④ 運用開始と精度改善

6-1. 運用開始直後に確認すべきポイント

FAQ自動化は、運用を開始してからが本番です。

初期段階では、想定していなかった質問や、意図と異なる回答、誤った案内が一定数発生します。

この状態を「失敗」と捉えるのではなく、想定との差分を洗い出すための情報として扱う姿勢が重要です。


特に確認すべきなのは以下のようなケースです。

  • 質問がヒットしていない
  • 回答は返っているが内容が分かりにくい
  • 人対応へ切り替えるべき質問にFAQが反応してしまっている

運用開始直後は、精度よりも「どこでつまずいているか」を把握することを優先する必要があります。

6-2. 利用ログを基に改善を回す

実際の利用ログは、FAQ自動化を改善するための最も重要な材料です。

ログを見ることで、どの質問が検索にヒットしていないのか、どの回答で離脱が多いのか、どの言い回しが想定されていなかったのかが明確になります。

この情報を基に、質問文の言い換えを追加する、回答文を簡潔に修正する、FAQの粒度を見直すといった改善を行います。

FAQ自動化の精度は、一度の調整で完成するものではなく、ログを見て直すという小さな改善の積み重ねによって安定していきます。

6-3. FAQ自動化を止めない体制を作る

FAQ自動化が定着しない原因の多くは、技術的な問題ではありません。

運用や改善が特定の担当者に依存してしまい、その人が忙しくなると更新が止まってしまうケースが非常に多く見られます。


FAQの追加や修正が属人化すると、「直した方がいいと分かっているが手が回らない」という状態になり、FAQ自動化そのものが形骸化します。

誰が見ても改善できるルールや、最低限の更新フローを用意しておくことで、FAQ自動化を継続しやすくなります。

7. FAQ自動化を成功させるための注意点

7-1. すべてを自動化しようとしない

FAQ自動化は、問い合わせをゼロにするための仕組みではありません。

すべての質問にFAQで対応しようとすると、無理な回答や曖昧な案内が増え、かえって利用者の満足度が下がることがあります。

FAQで対応すべき範囲と、人が対応すべき範囲を意識的に設計することで、FAQ自動化は「使われる仕組み」になります。

7-2. 「答えられない設計」をあらかじめ用意する

FAQ自動化では「答えられない場合にどう振る舞うか」も重要な設計要素です。

無理に回答を生成するのではなく、担当部署への案内や、問い合わせフォームへの誘導など、次の行動を明確に示す設計が求められます。

この逃げ道が用意されていることで、利用者は不安を感じにくくなり、FAQ全体への信頼性も高まります。

8. まとめ

FAQ自動化は、ツールを導入すること自体が目的ではありません。

現状の問い合わせを整理し、自動化する範囲と人が対応する範囲を見極め、段階的に進めることで初めて効果を発揮します。

また、FAQ自動化は一度作って終わりではなく、運用と改善を前提とした取り組みです。

業務に合った設計と運用を続けることで、FAQ自動化は現場に定着し、継続的な効果を生み出します。


そのため、FAQ自動化のツールを選ぶ際には、運用し続けられるかどうかという視点が重要になります。

具体的には、FAQやナレッジを簡単に更新できること、利用ログを取得して改善に活かせること、担当者が変わっても運用を引き継ぎやすいことなどが、長期的な成果を左右します。

FAQ自動化はツール選定で終わるものではなく、運用を回し続けるための仕組みまで含めて設計することが重要です。


FAQ自動化を進める中では、回答精度やナレッジ設計も重要な要素になります。

あわせて以下の記事も参考にしてみてください。

・AIチャットボットの精度を上げる方法|設計・ナレッジ・RAG・運用改善を解説  

・RAGとは?検索拡張生成の仕組みとAIチャットボット活用のポイント

・RAGの精度は「チャンク」で決まる|生成AIに最適な情報単位の作り方


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